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カートは空です

買い物を継続

⚫︎屋上管理という実験の始まり

当店がここ十年ほど続けてきた屋上管理での越冬について、条件も含めて書いておこうと思います。
ようやく感覚論ではなく、蓄積として語れるところまで来ました。

そもそも、非常に高価なこの植物をなぜ屋上に置いてみようと思ったのか。

一番大きな理由は、管理環境の再現性の高さでした

植物が調子を崩す原因の一つは、環境の急激な変化によるストレスです。

店からお客さんの元へ渡る瞬間、置き場所・光・風・温度は一気に変わります。

この急変が、植物にとって最大のストレスになります。

買い付け先は現地のナーセリーや、管理されたビニールハウス。
そこは生産に特化した環境であって、一般家庭での管理とはかけ離れています。
そのまま渡すのではなく、できるだけ多くの人が再現しやすい環境へ、あらかじめ順化させておく。

これはホリダスに限らず、当店が植物を扱ううえで常に意識していることです。

極端に言えば、「育てる」ことだけを考えるなら、地植えやビニールハウス管理が最も効率的でしょう。
ただ、そんな環境を持っているお客さんはごくわずかです。
ほとんどの人は、限られたスペースと条件の中で植物と付き合っています。

どれだけ育てられるかよりも、どれだけ“適応力を持たせられるか”。

そうして慣らされた株は、その後どんな場所に置かれても、他より一段強い反応を見せてくれる。

屋上管理という選択は、そのためのひとつの実験でした。

 

 

屋上越冬の安定化には、最初から確信があったわけではありません。

前々からホリダスが相当タフな植物だという印象は持っていましたが、屋上での越冬に関しては、「いけるんじゃないか?」という半ば勢いのような感覚で行った、というのが正直なところです。

場所は台東区・上野。

都内のビルの屋上という、決して植物に優しいとは言えない環境です。
管理していた株のサイズは大小さまざまで、管理年数はほぼ同じ。

最初に屋上へ上げた数は、おおよそ二十株前後だったと記憶しています。
品種はほとんどがホリダスで、アレナリウスあたりも少し混じっていて、管理条件はかなり極端でした。

・無遮光


・無加温


・雨ざらし


シートを掛けることもなければ、雪が多少ちらついても特別な対応はしない。
その間、こちらから水を与えることもなく、完全に放置していました。

それでも結果として、半分以上の株は問題なく越冬しました。
越冬できなかったのは、輸入時点ですでに傷みを抱えていたものと、幹幅5cm前後の比較的小型の株のうちのいくつかです。

逆に言えば、ある程度サイズがあり、状態の良かった株は、弱ることもなくそのまま春を迎えました。

 

 

⚫︎繰り返す中で見えてきたこと

その後も輸入と管理を繰り返すうちに、少しずつ共通点が見えてきました。
輸入元の管理状況、仕入れる国、株のサイズ。

そして何より大きいのが、やはり「輸入されてからどれだけ慣らされているか」という点です。

屋上管理を通して分かってきたのは、ホリダスが条件さえ整えば、多少荒れた環境でも生き抜く強さを持っている、ということでした。

国内での管理記録が乏しく、確定的な情報があまり流れていないのも事実ですが、株選びを間違えなければ、失うリスクは決して高い植物ではありません。

だからこそ、管理環境そのものよりも、「どんな状態の株を選ぶか」が重要になってきます。



⚫︎輸入直後の即売に対する違和感

ここで、はっきり言っておきたいことがあります。

輸入直後のホリダスを、そのまま商品として並べている業者は、植物屋ではありません

商材がたまたま植物なだけで、やっていることは横流しに近い。

植物を扱っているという自覚も、責任も感じられない。

これはホリダスに限った話ではありませんが、絶滅危惧種であるホリダスでそれをやる連中のことは、正直なところ許せません。

輸入直後の株には、見た目では分からないリスクが確実に残っています。
植え込んで一、二ヶ月経ってから突然死することも珍しくありませんし、輸入時についている葉は、国内環境ではほとんど参考にならない場合が多い。
多くの場合、それらの葉は時間とともに枯れ落ち、株全体の印象も大きく変わります。

それを分かった上で説明しないのか、そもそも理解していないのか。
どちらにしても、そんな状態の株を平然と即売する行為は、植物を扱う者として論外だと考えています。

当店では、ホリダスに限らず、輸入後すぐに販売することはしていません。
最低でも一年、国内環境で管理し、葉が入れ替わり、根が落ち着いた状態を確認してから販売しています。

時間も手間もかかりますが、ホリダスほどの植物を「売る」という行為には、それが最低ラインだと思っています。

回転を優先し、リスクを購入者に丸投げし、植物の未来には一切興味を持たない。

問題になるのは環境ではなく、そうした人間側の都合です。

「どんな状態の株を、誰が、どう扱っているのか」

これがどれほど重要か、これから植物を買うすべてのタイミングで思い返してほしいと思います。

 

ROUTE BOTANICALS
松井 孝太